留学から帰国したら、留学先と日本の文化の違いにショックを受けて、びっくりした。自分が育った国ってこんなところだったっけ?
海外移住してしばらくして日本に帰省したら、日本の友達や家族になじめていないような気がした。
こんな経験をして、自分の故郷の国で受けるカルチャーショック、いわゆる「逆カルチャーショック」について知りたい人に向けて書いた記事です。
イギリス在住歴2年半の私が、実際に日本に帰国して体験したことも踏まえています。
この記事で、こんなことがわかります。
- 逆カルチャーショックとは
- 逆カルチャーショックの具体例
- 逆カルチャーショックの原因
- 逆カルチャーショックの対処法
目次
逆カルチャーショックとは
カルチャーショックという言葉は多くの人が知っているでしょう。
ウィキペディアには、こう書かれています。
異文化に見たり触れたりした際、習慣・考え方・異文化の実像について、母国文化の常識と大幅に掛け離れていたり、自身が学校教育などで習得したその異文化に関する知識・情報と乖離しているため、心理的にショックを受けたり戸惑うことである。
異文化に触れることは、多くの場合全く違う世界に触れることなので、こうした反応が起きることは想像できます。
実際に、留学や出張、海外駐在の場合には、よくカルチャーショックについて説明があるようです。
そのため、海外に行く前に、本人はある程度心構えができますよね。
逆カルチャーショックの場合は、そうではありません。
英語ではreverse culture shockと呼ばれる、この逆カルチャーショックは、このように解説されています。
異国生活にすっかり馴染んでしまって、母国の文化や環境に強い違和感や心理的衝撃を受けること、を意味する語。自国文化に対するカルチャーショック。長期海外滞在から帰国した際などに起こりやすいとされる。
ー逆カルチャーショック – Weblio
日本で生まれ育った人が海外生活から帰ってくる場合に、日本に対して受けるカルチャーショックです。
つまり、慣れ親しんでいるはずの日本に帰ってきたときに、移住先と日本との違いにいろいろな面でショックを受けるわけです。
本人はもとより、家族や友人はなおさら、日本に「帰ってくる」人にカルチャーショックがあるなんて思いません。
予想していない分だけ、余計にショックが大きくなることがあります。
逆カルチャーショックの具体例
これから海外移住する予定の人、日本に帰国して逆カルチャーショックを感じ始めている人のために、よくある逆カルチャーショックの例を挙げます。
このような感情を抱くのは普通のことで、自分だけではないとわかれば、救われる方がいれば幸いです。
日本で当たり前だった文化や習慣、光景に驚く
よくある逆カルチャーショックの例として、日本では見慣れていた当たり前のことに衝撃を受けることが挙げられます。
よくも悪くも、日本らしい母国の文化や生活は他の国にはないユニークなものです。
お辞儀が多い
日本ほど、誰もがことあるごとにお辞儀をする国はないでしょう。
正確には、アジア諸国でもお辞儀をする人を見かけますが、日本ほど頻繁ではありません。
お辞儀をしない文化に慣れていると、人に挨拶する時などに相手がお辞儀するのを見て慌ててお辞儀をすることになります。
こうして忘れていた習慣を思い出し、こんなに当たり前だったことを忘れたことに驚きます。
人の顔が死んでいる
全体的な日本人の傾向として、表情が豊かでない人が多いです。
特に一人でいる人、電車に乗っている人、通勤中の人…
失われた30年の経済の滞りを感じますね。
他の国と比べると、日本のようにデフレがこんなに長く続いてきた国は他にありません。
道行く人の顔に、活気がないんです。
多少貧しくても、人々が明るく笑顔でいる国は、未来があるように感じます。
とはいえ、人と接するときはステキな笑顔をする方が多いです。
一人でいても明るい表情の人が増えるといいのですが。
年上の人を敬う
日本のように儒教の影響を強く受けている中国、韓国などと比べると、例えば西洋諸国では年上だから敬うということはありません。
もちろん、全く敬わないわけではないにしても、例えば日本ではよくあることが他の国では起こらないことがあります。
- 相手の歳を聞く
- テーブルのどの席につくかで迷う
- 相手が年下だとわかったらタメ語になる
- 上司や年上の人に逆らえない
こういった傾向は、日本だけでなくアジア全般で見られることがあります。
それでもこの年上・年下の上下関係が顕著な日本では、他の国から久しぶりに帰ると不思議に映るかもしれません。
緑が少ない
これは私が感じた逆カルチャーショックの一つです。
日本では、いわゆる田舎で田んぼや森が広がっているのでもない限り、住宅地や街中で緑が生い茂っているところはほとんどありません。
基本的に、コンクリートの道路とコンクリートの建物が所狭しと土地を埋め尽くしています。
ちょっとした植木や街路樹がポツポツとあるのがせめてもの救いですが、なかなかまとまった緑のある風景が見られないのが寂しいです。
私がこんな風に緑を鑑賞したいと思うようになったのも、イギリスの生活を体験してからです。
家には、恵まれていることに子供が走り回れるくらいの広さの芝生と木が生い茂る庭があります。
外を歩けば、歩道の脇や家の前にも芝生や木々、色とりどりのお花が目を楽しませてくれます。
住宅地のすぐ近くには、芝生で覆われた大きな公園や、鴨たちが泳ぐ池、背の高い木々がひしめく林があります。
それを見ているだけで、かなりストレスが軽減され、安らぐことができます。
日本でそれを体験したければ、田舎までドライブするしかありません。
日本の友人や家族に馴染めない
楽しみにしていたはずの、日本の家族や友達との再会で、「あれ?」と感じることがあります。
感じる可能性のある感情には、次のものがあります。
- 疎外感
- 孤独感
- 違和感
- 不安感
具体的には、こういった事例です。
- 相手と自分の世の中や世界を見る観点に大きな差を感じる
- 日本にいなかった間に国内で起きた変化についていけない
- 滞在先の国の文化に影響を受けて自分自身の生活や考え方が変わってしまい、日本に住む人と同じように振る舞うことに違和感を感じる
- 滞在先の国の文化に影響を受けて自分自身の生活や考え方が変わってしまい、日本に住む人と自分は違うという疎外感を感じる
私も、1年や2年という短期間でこういう感情を少なからず感じました。
この問題が難しいのは、人には言いづらいということです。
滞在先の文化に影響を受けている場合、それを相談したら「海外かぶれ」のレッテルを貼られることもあります。
相手に悪気はないにせよ、「あなたは私とは違う」と言われている気がして疎外感を感じます。
自分のアイデンティティがわからない
これは、海外移住を経験したことのない人には、想像しづらいことかもしれません。
自分のアイデンティティ、つまり「自分が何者であるか」ということは、海外に長期滞在すると揺らぐことがあります。
私も、いまだに自分のアイデンティティがわからないと感じることがあります。
海外にいると、ほとんどの場合日本人はマイノリティになります。
そこには日本人以外の人がたくさんいます。
すると他の人の行動、文化、慣習との違いが際立ちます。
結果、日本にいるとき以上に「自分が日本人である」ということを意識するようになります。
反対に、移住先の国の文化に慣れてしまい、アイデンティティが日本人であることから遠ざかっていくこともあります。
外国に住むということは、自分と違う環境や文化で育った人と少なからず接することなので、どちらも自然なことです。
日本に帰国すると、特に「自分とは何者なのか?」「自分は日本人だと思っていたけど、なんか日本の文化に違和感を感じる」ということが起きます。
移住先の文化に慣れてしまった人は、日本ではいわゆる「海外かぶれ」と思われてしまうこともあります。
海外かぶれという言葉は辞書にないようですが、「西洋かぶれ」はこう説明されています。
自身の所属する文化より西洋文化を良しとして、振る舞いや服装などを西洋文化のそれに似せること、あるいはそのように振る舞う人物を指す蔑称。
ー西洋かぶれ – Wikipedia
移住先の文化に慣れてしまった本人としては、別に海外に住んでいることを自慢するつもりがなかったとしても、人によっては気に触ることがあるようです。
こうした日本での経験でも、ますます自分のアイデンティティについて困惑してしまいます。
逆カルチャーショックの原因
では、逆カルチャーショックとはどうして起こるのでしょうか?
これまでの具体例でも軽く触れましたが、私は次の2つの原因があると考えます。
- しばらく違う文化や生活に慣れてしまいそれが当たり前になる
- 自国(日本)にいるときには気づかなかった移住先との違いが、移住し帰国することでよくわかる
しばらく違う文化や生活に慣れてしまいそれが当たり前になる
人間は、環境が変わると、他の動物と同じように新しい環境に適応しようとします。
全く違う業界に転職したり、都会から田舎、田舎から都会に引っ越したりするときも、同じです。
日本国外での生活を長く続けていれば、自然とその地での生活になじむために、柔軟に変化する可能性が高いです。
というより、そうせざるを得ないこともあります。
顕著なのが、食事です。
日本では気軽に買える海藻類、魚介類、大豆製品などは、他の国では手に入りづらかったり、値段が高かったりします。
日本にいた時と同じ食生活がしたいと思っても、まず全く同じは無理です。
食費も当然高くつき、質も日本より劣るでしょう。
そこまでするくらいなら、現地でとれた食材で、できる範囲で入手した調味料で料理した方がいいと思いませんか。
そうやって、その地に少しずつ適応していくのです。
また、住む場所が変われば、生活の基本的な習慣も大きく変わります。
行事などは良い例です。
日本では初詣を毎年している人も、外国で神社に行けることはなかなかないでしょう。
すると、現地にある宗教施設に「お参り」に行くか、家に備えた神棚でお参りするかの選択肢しかないと思います。
日本での初詣の感じは、全く味わえないでしょう。
キリスト教徒が多いところでは、イースターやクリスマスの捉え方ももちろん違います。
イスラム教徒が多いところでは、ラマダン(断食)などの慣習に従う必要がある場合もあります。
その環境で生活するうちに、だんだんと新しい環境に慣れていき、気づくとそれが当たり前になっています。
「郷に入れば郷に従え」と言われるように、新しい土地に住んだらそこに馴染んでいくのは当然のマナーとも言えます。
そして、生活習慣が変われば、日本にいた時の生活との違いが出てくるため、当然ショックを受けます。
日本にいるときには気づかなかった移住先と日本との違いが、帰国することでよくわかる
逆カルチャーショックが起きるもう一つの原因が、帰国することで日本と移住先の違いがよく見えることです。
海外に住み始めてしばらくすると、日本のことを覚えているつもりでも、意外と忘れていたりします。
日本にいるときは、他に比較するものがないので、日常の小さなことは気にも止めないからです。
また、日本を離れている間に日本で目に見える変化があって、その変化に驚くこともあります。
その結果、帰国した時に「日本ってこんなとこだったっけ?」と逆カルチャーショックを受けるのです。
逆カルチャーショックの対処法
他の人になかなか理解されにくい逆カルチャーショックを受けたときの対処法は、これだけ挙げられます。
- できれば海外移住前に逆カルチャーショックのことを知っておく
- 逆カルチャーショックを受けるのはよくあることだと理解する
- 逆カルチャーショックを受けた経験のある人に話を聞く
他にもあるかもしれませんが、これで少しは逆カルチャーショックを和らげることができるはずです。
できれば海外移住前に逆カルチャーショックのことを知っておく
もしまだ海外移住をしていない段階なら、今の時点で逆カルチャーショックがあるということが分かっただけでもとてもラッキーです。
カルチャーショックについては心構えをしているかもしれません。
せっかくこの記事にたどり着いたわけなので、逆カルチャーショックの概要と具体例を頭の隅に入れておいてください。
先々、日本に帰国した時に「このことか」と思い出すことができます。
逆カルチャーショックの存在を全く知らない場合と比べれば、落ち着いて対処できるはずです。
逆カルチャーショックを受けるのはよくあることだと理解する
ここに書いているような逆カルチャーショックの体験は、何も特別なことではなく、誰にでも起こりうることです。
自分だけではなく、多くの人が経験していると思えば少しは気持ちが楽になるかもしれません。
逆カルチャーショックを受けた経験のある人に話を聞く
逆カルチャーショックを受けた経験のある人はたくさんいるので、その人に話を聞いてみるのも一つの方法です。
こうした体験は、人によってショックの大きさや内容も様々です。
ものすごくショックを受けた人の話を聞いても、みんながみんな大きなショックを受けるわけではありません。
話を聞くときは「こういうこともあるんだ」くらいに受け止めるといいと思います。
私も少なからず逆カルチャーショックを経験したので、もしこの記事に書いていない内容について質問があれば、ぜひ聞いてください。